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コウノドリで扱われた未受診妊婦の駆け込み出産~野良妊婦の背景

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綾野剛さんの主演ドラマ、コウノドリの1話が放送されました。
産婦人科の今を描くということで、かなりヘビーな内容と覚悟していましたが。
笑いもありながら、終わっても自然に涙があふれてくる、心温まる第1話でした。
今回のテーマは、ネットなどでは野良妊婦と揶揄される、未受診妊婦の駆け込み出産です。
では、詳しく見ていきましょう。

受け入れ拒否の理由

今回、舞台になっているペルソナ総合医療センターは、非常に設備と人材の整った病院です。
新生児科にNICU(新生児集中治療室)もあり、産科、救命救急医、助産師、麻酔医、そしてメディカルソーシャルワーカーが常駐する、地域周産期母子医療センターに指定されています。

しかし未受診妊婦を乗せた、救急車からの搬送を新米産婦人科医下屋(松岡茉優さん)が受け入れにとまどう場面が出てきます。
あえて医者の口からスラング的な、野良妊婦と使うほど、病院側に大きなリスクあるからです。

患者情報がない

まず問題なのは、胎児が何週目であるかなど、基本的な情報がないまま、搬送されることです。
出産を経験されたママなら、検診は赤ちゃんの状態を見るエコーだけでなく、血液検査など、さまざまな検査があったこと覚えていると思います。
赤ちゃんの状態はもちろん、母体の健康状態をチェックしているのですが、そこが抜け落ちている、ということになります。

駆け込み出産は、母体に危険が及ぶケースが約75%にも上り、多くの胎児・新生児が危険にさらされています。
今回も病院に到着した時点で、患者の矢野夏希(清水富美加さん)もまず逆子でした。
その上破水の勢いでへその緒が飛び出して産道に挟まれ、赤ちゃんに酸素が届かない、臍帯脱出で緊急手術を要する状態でした。

院内感染の危険

新米小児科医白川(坂口健太郎さん)が、上司の今橋に(大森南朋さん)に話す言葉が、まさに危険性を物語っています。
『感染症を持っていたら、もろにバイオテロじゃないですか!』
つまり、ウィルス性肝炎やAIDSなど、深刻な感染症の場合には、院内感染の危険性も出てくる、ということです。

出産費用の踏み倒し・生み逃げ

駆け込み出産した妊婦が病院からいなくなった時、『やっぱり逃げられたか~』と助産師小松(吉田羊さん)が発言しています。
危険をおかしてまで、受け入れた患者がいなくなるという事態は、そこまで珍しいことではない、ということです。
出産費用が回収できないことももちろんですが、生み逃げしたまま赤ちゃんを遺棄することも少なくありません。
これは完全に犯罪ですよね。

未受診妊婦増加の背景

今回の未受診妊婦は、元々望まれない妊娠で生まれた子供で、不遇な家庭環境で育ち、借金を抱え、母子手帳の交付さえ受けていませんでした。
赤ちゃんの父親にも自分の子であるかを疑われ、逃げられてしまっています。
母親に『あんたなんか、生まなきゃよかった』と言われながら育った彼女は、自らもいつかそうなるのでは、と恐れていました。
そんな戸惑いの中でお腹だけが大きくなって、死をも意識しながら、ネットカフェにいるしかなかった、ということです。
まさに野良妊婦の状態で、役所なんて行けるはずがない、という感覚だったようですね。

少し古いデータですが、厚生労働省によると、2011年度出産後に届け出たケースが全国で2398例もありました。
母子手帳を受け取っていれば、何回か無料で検診を受けられただろうし、救済制度があることも分かったはずです。
ここで救う手立てがないものか、と思ってしまいますね。

前途多難な未来への光

今回の例以外にも、
・妊娠の知識がなく、どうしていいか分からない
・何人も子供を産んで、自信を持った母親が検診を受けない
・妊娠そのものに気づかない
などで、経済的な理由は約3割にとどまっていることから、経済的な問題だけが背景ではないようです。
ドラマでも今橋が貧しいっていうのはお金がないだけじゃない、とつぶやくシーンがあります。
教育が受けられない、情報が得られない、家族や仲間の縁に恵まれない、その結果が駆け込み出産だ、と。

搬入受け入れ先がこの病院で夏希は助かりましたね。
夏希の元に産まれたこころちゃんは、乳児院に引き取られ、夏希は行政の助けを借りて仕事を探し、社会復帰を目指すことになりました。

鴻鳥サクラ(綾野剛さん)がこころちゃんに話しかける言葉が物語っていると思います。
『君にはこれから人よりたくさん辛いことがあるかもしれない。
けれど君はいつか、人の何倍も何十倍も幸せになることだってできるんだ。
うまれてきて、おめでとう』
サクラの手を強く握りしめるこころちゃん。

このシーンで赤ちゃんの手の平に大人の指などを入れると、ギュッと握るんだよ~、などと野暮なことを思ってはいけません(汗)。
ハッピーエンドではありませんが、それが現実としながらも、未来に少し光が見えた、素敵なエンディングでした。

編集後記

最近の医療ドラマは天才医師が出てきたり、権力闘争があったり、日常では出会うことのない話が多く、それはそれで面白いのですが。
今回のコウノドリは、日常当たり前に起こる危険を、淡々と、丁寧に描いています。
ネットでの評判も上々で、涙した方も多いようです。
なにより登場する赤ちゃんが新生児に近く、癒されますね。
こちらをご覧になっているママにとって、自分の出産を思い出しながら改めて子供の存在のありがたさに気づけるドラマです。
見逃した方も10月23日までTBSオンデマンドでドラマのコウノドリの1話を無料配信されていますので、ぜひご覧になってくださいね。

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